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時空を超えて現代に飛んできた
スリングストーン

古代チャモロのシンボル、スリングストーン

チャモロ文化のシンボルとなっているスリングストーン。グアムの紋章にも用いられ、赤い線で描かれたアーモンド型はグアムの人にとってはおなじみの形だ。
 

(グアムの島旗にもスリングストーンの形が用いられている)
 

スリングストーンとは石を飛ばす投石器のことで、先ラッテ時代(8世紀以前)から武器として使用されていた。スペイン統治の下、キリスト教への改宗を強いたスペインへの反乱、スペイン・チャモロ戦争(1668年)でもスリングストーンが活躍。それまでのチャモロの武器は敵に近づかなければ使えない槍やこん棒が主だったが、安全を確保した距離から的確にターゲットに打撃を与えられるスリングストーンは、当時としては画期的な武器だった。
 

(古代、武器として使われていたスリングストーン。アーモンド型が特徴的)
 

石の大きさは小さな卵ほどのものから手のひらサイズまで、重さは40〜80グラム、大きなもので900グラムほど。石灰岩や玄武岩、また火で硬くした土などを用いて作られた。
 

スリングストーンはチャモロ語で「アチョ・アトゥパット(åcho’ atupat)」。「アトゥパット」とはココナッツやパンダナスの繊維で作る、石を置くための小袋がついたロープ状のもの。人々はアトゥパットとアーモンド型の石を「バラクバク(balakbak)」と呼ばれる小さなバッグに入れ持ち運んだ。
 

(古代使われていた石が未だにビーチやジャングルなどで発見される)
 

古代、チャモロの男性は「グマ・ウリタオ(Guma’ Uritao)」と呼ばれる集会所で狩りや漁など男性として必要な技術を学ぶ。スリングストーンの扱いもここで習得するが、狩りに使われることはなかった。
 

石を乗せたアトゥパットを頭上でぐるぐると回し、一定の速度に達すると標的に向かって石を放つ。勢いよく放たれた石は螺旋を描きながら宙を飛び、遠心力も加わって命中すると柔らかなものであれば貫通するほどの破壊力を持つ。スリングストーンを狩りに用いなかったのは獲物への衝撃が強すぎ、食糧として使えなくなるからではないかと考えられている。
 

このように古代チャモロ社会には欠かせなかったスリングストーンだが、その起源については島外から持ち込まれたという説とチャモロが独自に作り出した説とに分かれ、議論が交わされている。マリアナ諸島でスリングストーンが使われ始めた時期以前に、よく似たものがメラネシア周辺文化の書物に登場するためだ。しかしスリングストーンがチャモロ社会に及ぼした影響は極めて大きく、スリングストーンが国旗(島旗)に描かれているのは世界中でグアムだけだ。

スポーツとして現代によみがえるスリングストーン

スリングストーンは武器として使われた時代から数百年の時を経て、現在再び注目を集めている。主に男性の間で、的に向かって石を投げるスポーツとして親しまれているのだ。
 

(「スリング・グアム」のオーナー、マット・レイズ)
 

復活させたのはマット・レイズ(Matt Reyes)。チャモロダンスグループ「イネットノン・ゲフ・パゴ(Inetnon Gef Pa’go)」に在籍時、スリングストーンを使ったパフォーマンスを見たことがきっかけだと言う。友人に作り方を教わり、自作のスリングストーンを初めて投げた時、この素晴らしいチャモロの文化をもっと多くの人に知ってもらうべきだと「スリング・グアム(Sling Guam)」というビジネスを立ち上げた。
 

(「スリング・グアム」のカラフルでおしゃれなスリングストーンは若者に支持されている)
 

(「スリング・グアム」のポップアップショップはチャモロビレッジ・ナイトマーケットにオープン)
 

思考錯誤の末、耐久性や機能性に優れ、現代的でおしゃれなスリングストーンを完成させ販売。反響は彼の予想を大きく超え、今年3月にはチャモロ月間の一環としてグアム教育省(Guam Department of Education)がスリングストーン大会を開催。マットは5月にグアムミュージアムで講演を行い、夏には100名もの女性を対象にしたスリングストーン教室を開催するまでにグアム社会に浸透した。
 

(76人の女性がスリングストーンを体験した教会主催のガールズサマーキャンプ)
 

「投げるだけならとっても簡単。野球のボールを投げる要領ですぐにできるようになります。ただ標的に当てるには少し練習が必要です」と言う一方で、「最近ではスリングゴルフという新しいスポーツが誕生しました。パー5のホールでもスリングストーンを使えば5スリング以下でホールを狙えます」と嬉しそうに話す。
 

祖先が戦いに使ったスリングストーン。古代チャモロ文化のひとつ、スピアフィッシングと同様、現代によみがえり人々の趣味として、レクリエーションとして広く愛されている。
 

(チャモロビレッジナイトマーケット(5:00PM~9:00PM)でスリングストーンを体験できる。ハガニアボートベイスン側の海沿い)
 

(未経験者や小さな子供にも優しく指導してくれる)
 

毎週水曜日夜に開催されるチャモロビレッジ・ナイトマーケットでは、スリング・グアム主催の体験コーナーが設けられ、ブースではスリングストーンが販売されるなど、今後も愛好者は増えそうだ。

 
 

2019/10/22 グアム Island Time

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