<インタビュー>
最年長のトライアスリート キルハック・キリー・クニモト
日に焼けた顔に引き締まった身体、軽快に語られるアスリート話。御歳70を迎えたグアム最年長のトライアスリート、“キリー”の愛称で親しまれるキルハック・キリー・クニモト(Kilhak “Killy” Kunimoto)だ。
中学生で陸上を始め、腰痛の治療に始めた水泳がきっかけで6年前にトライアスロンに転向。建築士として事務所を運営する傍ら、本格的にトレーニングを重ねレースに臨むようになったのは3年前、67歳の時だという。
水泳、自転車、ランニングと3種を行うトライアスロンのために全身の筋肉をバランスよく鍛え「心身ともに元気でいられるのはトライアスロンのおかげ」と話す彼は、取材時は毎年8月にフィリピンセブ島で開催される『アイアンマン(IRONMAN)』に向けてトレーニングの真っ只中。目指すは優勝、そして今年、世界ランキング6位に入ることだ。
(キリーの日常の食事。食事はすべて自分で作り、豆腐や納豆、枝豆、卵、サーモンなどプロテインをメインに摂取)
キリーの1日は早朝の3km水泳から始まる。そして午後の10kmラン、ジムでの持久力強化トレーニングが日課。週1日休養日を作り、週末は自転車で90kmを走る。厳しいレースを乗り切るための身体作りに、食事はプロテイン豊富な食材と野菜が中心。サプリメントは一切摂らない。この節制した日常によって健康診断はすべて異常なし。おかげでいまだ自己ベストを更新中で、それがトライアスロンの魅力だと語る。
「まだ上を目指すことができるという思いが記録更新へとつながる。トライアスロンは人に勝つためではなく自分に勝つためのスポーツ」と話す。トレーニングやレースで得た身体の痛みを心地いいと言い、「日々のトレーニングで不精をすれば必ずレースに表れる」と、今では1日24時間トライアスロン中心の生活だ。
トライアスロンを通して世界中のアスリートと知り合えることも大きな魅力。大きな大会になればなるほど参加者の思いは熱く強く、自分を鼓舞してくれる。日々のトレーニングは大会で出会ったトップアスリートたちのアドバイスや情報を基に、自分でメニューを考える。専門のコーチをつけたことはない。「体力的に若いアスリートと同じメニューをこなすことは難しい。レース後のリカバリーにも時間がかかる。私のような年齢のアスリートを理解できるのは、同じ年齢層の経験豊富なアスリートたち」と、互いの状況を理解し合える友の存在も大きなモチベーションとなる。
(『アイアンマン2017』で年齢別世界ランキング11位を獲得した時の記録証明)
2017年に世界ランキング年齢別11位を獲得。さらに上位を目指すには指定されたレースに年3回以上出場しなければならない。キリーがエントリーする『アイアンマン70.3』と呼ばれるレースは水泳1.9km、バイク90km、ランニング21.0975kmという過酷なレース。今年4月、フィリピンのダバオ大会で年齢別で優勝。今は8月の大会日から逆算して、自分を限界まで追い込む厳しいトレーニング中。最後2週間はリカバリーに時間をかけ、本番に挑む。
年齢と共に体力の低下や発病は免れない、という一般的な考えを払拭するキリーのアスリート魂。昨年誕生した愛息の存在がさらなるパワーをもたらしてくれる。「若い頃から少しずつ運動していると、必ず歳をとってからその成果が戻ってくる」といい、トライアスロンでもマラソンでも海外の大会に出場して世界を見ること、世界の人と繋がることが結果をもたらすと、私たちに、若いアスリートにアドバイスを贈る。