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ヤシの木を守ろう!
グアム日本人学校幼稚部プロジェクト

グアムのヤシの木の現状について

南国のシンボルといえばヤシの木。青い空に向かって力強くまっすぐに伸びる姿は、まさに南国の景色そのもの。観光客にとっては思わずカメラに収めたくなる景色です。
 

グアムの人々にとってもヤシの木はとても身近な存在。古代では果実は飲料や食料として、乾燥した実の繊維は衣類の原料として、硬い殻は燃料として、そして葉は籠や敷物などさまざまな生活用具の材料として、捨てるところがないと言われるほど有効的に活用されてきました。
 

現在も伝統的なチャモロ料理を作る際には庭のヤシの木から実を取って削り、ココナッツミルクを手作りすることもしばしば。
 

しかしこの10年ほどで、グアムのヤシの木を取り巻く環境は大きく変化しました。2007年9月にグアムで初めてライノビートル(Rhino Beetle)という外来種の昆虫が発見され、それらがヤシの木を喰い荒し、枯れていったのです。
 

日本ではカブトムシは夏の昆虫の王様ですが、グアムでは害虫です。グアム農務省(Guam Department of Agriculture)を中心に、現在も至るところでライノビートルの駆除が行われています。
 

自分たちの手でヤシの木を守る

古代から島の人々の暮らしを支えたヤシの木。美しいヤシの木のある風景を守り伝えていこうと、グアム農務省は学校に足を運び、小さな子供たちにもグアムのヤシの木が直面している問題を提起しています。
 

グアムに住む日本の子供たちなどが通う「グアム日本人学校」の幼稚部でも、昨年12月『ヤシの木プロジェクト』が始動。きっかけは、小さな子供たちが学校のグラウンドの朽ちたヤシの木からライノビートルの幼虫や成虫を見つけたことでした。
 

虫が大好きな子供たち。「わぁ!カブトムシだ!」と大喜びでしたが、グアムの人々にとってそれはライノビートル、ただちに駆除しなければならない害虫です。
 

そこで先生たちは、子供たちがグアムの自然について学び、考え、守る活動ができないかと『ヤシの木プロジェクト』を提案。
 

青々と葉を茂らせていた頃は子供たちに大きな日陰を作り、同じ校舎で学ぶ中学部のお兄さんがとってくれた実を割り、みんなでココナッツジュースを飲んだり、日本人学校の子供たちにとっても大切なヤシの木。子供たちも大賛成でプロジェクトがスタートしました。
 

プロジェクトは4段階で行われます。まずはグアムに生息する植物の生態に詳しいハマモト・ガーデンズ(Hamamoto Gardens)の濱本久允氏やグアム大学(University of Guam)の教授に話しを聞き、ポスター作りです。島の人々の意識も高めていこうと、校内だけでなくショッピングセンターなどにも掲示しました。
 

自分たちで見て、触れて、感じて

プロジェクトの2段階目は、ライノビートルを実際に自分たちの目で見ること。グアム農務省のスペシャリストが来校し、レクチャーが行われました。
 

実際に生きているライノビートルの卵、幼虫、蛹、成虫の成長段階を見たり、興味のある子供たちは触ってみたり、興味津々。
 

最近まで「かっこいい!」と思っていた昆虫が、実は美しいヤシの木を枯らしてしまう悪い虫だということが、小さな子供たちにも少しずつ分かってきたようです。
 

その後、校内にある朽ちたヤシの木の伐採も行われました。ライノビートルが木を喰い荒すと聞いても実際、木の中はどのようになっているのか、見てみないと実感がわきません。
 

切り倒された木の幹から出てきたのは大量の幼虫。1cmほどの小さなものから、成虫の大きさを超える巨大なもの、そして5mmほどの小さな卵も。100〜200匹という卵や幼虫が出てきました。
 

幹の内部は原型をとどめることなく、幼虫の糞と混ざり土にようになっています。これでは立派な木に育つはずもありません。子供も先生もビックリです。
 

自分たちの手でヤシの木を守る

集められた卵や幼虫の処分はグアム農務省にお任せし、次はプロジェクト3段階目となる罠作り。伐採した木を細かく切り分け、その上に網をかけていきます。
 

切り分けられた木から発する匂いにライノビートルの成虫が集まりますが、網に足が引っ掛かり飛び立てず、そのまま捕獲されたり、死んでしまうという、とってもシンプルな仕掛け。
 

しかし翌日には5〜6匹が網にかかり、その後も大量の成虫が網に引っ掛かりました。子供たちのライノビートル捕獲作戦は大成功です!
 

プロジェクト最終段階となるのは植樹。乾季のシーズンは水分不足により、せっかく植えた木が枯れてしまうことがあるので、今後、雨季を待って行われる予定です。
 
 

子供たちの日々の遊びの中から始まった『ヤシの木プロジェクト』。現状を知り、実際に見たり触ったり感じたりすることによって、小さな子供たちの心の中に、グアムの自然や、自分たちの身の回りの環境について、少し関心が芽生えたのではないでしょうか。
 

美しいヤシの木が並ぶアサン地区にある太平洋戦争国立歴史公園(通称アサンビーチパーク)も、一時は多くのヤシの木が枯れてしまいました。しかしグアム農務省などの駆除・保護活動により、少しずつ元の美しい景観が戻っています。
 

「グアム日本人学校」にも、そして島全体に、1日でも早く元気なヤシの木が成長していくことを切に願います。
 

最後に、グアム大学の教授によると、ライノビートルを捕獲した際には洗剤をかけて駆除するのがいいそうです。またライノビートルなどの外来種についての問い合わせは、グアム農務省のインバシブ・スペシーズ・ホットライン(Invasive Species Hotline)まで。
 

Information

問い合わせ:グアム農務省インバシブ・スペシーズ・ホットライン
     (Guam Department of Agriculture Invasive Species Hotline)
電話:+1 (671) 475-7378
URL:http://cnas-re.uog.edu/crb/

2018/04/27 グアム Island Time

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